信大医学部(松本市)の桜井晃洋准教授(49)=内分泌学=ら国内の医師のグループが、患者が数万人に1人の割合で、診療事例が少ない難病「多発性内分泌腫瘍(しゅよう)症(MEN)」の診療指針を作成する。全国の医療機関から、指針作りの基になる症例データの収集を進めている。
桜井准教授によると、MENは原因の遺伝子が異なる2種類があり、1つは脳下垂体や膵(すい)臓に、もう1つは甲状腺や副腎に良性や悪性の腫瘍ができる。患者は臓器摘出や薬剤投与などの治療が続き、遺伝で家族が病気になるという不安も抱える。特徴的な症状がなく、患者でもMENと診断されない人が多いという。
データ収集では、各医療機関が、患者ごとに、最初に症状が出た年やMENと診断された年、治療やその後の経過などを記録媒体に入力して桜井准教授に送る=図。氏名など個人の特定につながる情報は扱わず、情報漏れを防ぐため、桜井准教授のデータ収集専用のパソコンはインターネットに接続しない。
データ収集は昨年度に開始。現在、信大病院など21機関がデータ提供に応じ、既に集まった数100人分の情報の解析も始めた。本年度からは厚労省の補助金(1600万円余)も受けている。
日本でMENの症例データ収集の仕組みができたのはこれが初めてで、日本人の病状に基づいた診療指針を作る。桜井准教授らは、集まった情報を整理し、病状ごとに有効な治療法を調べ、2011年度までに診療指針にまとめる。欧米でも、日本と同様に大人数の症例を集めた診療指針作りが進んでいるという。
全国から集まるデータは、来月には2種類でそれぞれ約500人ずつに上る見通し。桜井准教授は「かなり説得力のある解析結果が得られるのではないか」と話している。